婚約破棄で慰謝料請求できる?相場・条件・証拠を弁護士が解説
結婚式や新居の準備を進めていたにもかかわらず、突然「結婚できない」「別れたい」と言われてしまうことがあります。
婚約を破棄された方の中には、
「一方的に婚約を破棄されたので慰謝料を請求したい」
「婚約指輪は受け取ったが、法的に婚約していたといえるのか」
「結婚式場のキャンセル料や新居の費用も請求できるのか」
「こちらから婚約解消を申し出た場合でも慰謝料を請求できるのか」
と悩んでいる方もいらっしゃるでしょう。
婚約は、婚姻届を提出する前の段階ではありますが、法律上保護される場合があります。そのため、正当な理由なく婚約を破棄された場合には、精神的苦痛に対する慰謝料や、結婚準備のために支出した費用などを請求できる可能性があります。
ただし、単に交際していたというだけでは婚約が成立しているとは限りません。また、婚約破棄に正当な理由がある場合には、慰謝料請求が認められないこともあります。
本記事では、婚約破棄で慰謝料を請求できる条件、慰謝料額を左右する事情、請求できる費用、必要な証拠、請求方法などについて、弁護士が分かりやすく解説します。
目次
- 1.婚約破棄とは
- 婚約破棄と婚約解消の違い
- 2.法律上の婚約はいつ成立するのか
- 口約束でも婚約は成立する
- 婚約成立を示す主な事情
- 婚約が成立しているとは言いにくいケース
- 3.婚約破棄で慰謝料を請求できる条件
- (1)法律上保護される婚約が成立していた
- (2)婚約が破棄または解消された
- (3)婚約破棄に正当な理由がない
- (4)精神的または経済的な損害が生じた
- 4.婚約破棄の正当な理由が認められるケース
- (1)婚約者が浮気をした
- (2)暴力や重大なモラハラがあった
- (3)重要な事実について重大な嘘をつかれていた
- (4)婚約者が行方不明になった
- (5)婚約者に結婚生活を継続できない重大な問題がある
- 5.正当な理由が認められにくいケース
- (1)気持ちが冷めた
- (2)ほかに好きな人ができた
- (3)親に反対された
- (4)容姿や年齢に不満がある
- (5)占いや縁起が悪いといわれた
- (6)性格や価値観が合わない
- 6.自分から婚約解消を申し出た場合も請求できるのか
- 7.婚約破棄の慰謝料の相場
- 慰謝料が高くなる可能性がある事情
- 慰謝料が低くなる可能性がある事情
- 8.婚約破棄で集めておきたい証拠
- (1)婚約が成立していたことを示す証拠
- (2)婚約を破棄されたことを示す証拠
- (3)相手に責任があることを示す証拠
- (4)損害額を示す証拠
- 9.婚約破棄で慰謝料を請求する流れ
- (1)婚約成立から破棄までの経緯を整理する
- (2)証拠を保存する
- (3)請求する金額を検討する
- (4)相手と交渉する
- (5)合意書を作成する
- (6)家庭裁判所の調停を利用する
- (7)裁判を起こす
- 10.婚約破棄の慰謝料請求には時効がある
- 11.婚約破棄について弁護士へ相談するメリット
- (1)婚約が成立していたか判断できる
- (2)婚約破棄に正当な理由があるか判断できる
- (3)適切な慰謝料や損害額を計算できる
- (4)相手との交渉を任せられる
- (5)示談書や公正証書を作成できる
- 12.まとめ
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1.婚約破棄とは
婚約とは、将来結婚することについて、当事者同士が合意することです。
婚約破棄とは、成立していた婚約を一方の当事者が解消し、結婚しないことをいいます。
婚約は契約として法律上保護される場合がありますが、結婚は本人の自由な意思に基づいて行われるものです。そのため、婚約していたとしても、相手に結婚そのものを強制することはできません。
一方で、正当な理由なく一方的に婚約を破棄した場合には、婚約を破棄した側が損害賠償責任を負う可能性があります。
最高裁判所も、婚姻の予約は将来適法な婚姻をすることを目的とする契約であり、正当な理由なく婚約を破棄した場合には、精神的損害を含む損害賠償責任が生じることを認めています。
婚約破棄と婚約解消の違い
「婚約破棄」と「婚約解消」は、実際には同じような意味で使われることがあります。
一般的には、当事者双方が話し合って婚約を取りやめる場合を「婚約解消」、一方が相手の意思に反して婚約を取りやめる場合を「婚約破棄」と表現することがあります。
もっとも、名称だけで慰謝料の支払い義務が決まるわけではありません。
重要なのは、婚約が成立していたか、婚約が終了した原因は何か、どちらに責任があるのかという点です。
2.法律上の婚約はいつ成立するのか
婚約を理由として慰謝料を請求するためには、まず、法律上保護される婚約が成立していたことが必要です。
口約束でも婚約は成立する
婚約の成立に、契約書、結納、婚約指輪などの決まった形式はありません。
当事者が真剣に将来結婚することを合意していれば、口頭の約束だけでも婚約が成立する可能性があります。
ただし、「いつか結婚できたらいいね」「ずっと一緒にいたい」といった恋人同士の会話だけでは、確定的な結婚の合意があったと認められない可能性があります。
婚約が成立しているかどうかは、当事者の言葉だけでなく、結婚に向けてどのような行動をしていたかも踏まえて総合的に判断されます。
婚約成立を示す主な事情
次のような事情がある場合には、婚約が成立していたと判断されやすくなります。
明確なプロポーズと承諾があった
婚約指輪を贈った、または受け取った
結納を行った
両親や親族へ結婚の挨拶をした
両家の顔合わせを行った
結婚式場を予約した
結婚式の招待状を発送した
新婚旅行を予約した
新居を契約した
結婚を理由に退職や転職の準備をした
勤務先や友人へ結婚予定を報告した
LINEやメールで結婚時期について具体的に話し合っていた
これらの事情が一つあれば、必ず婚約が成立するというわけではありません。
一方、婚約指輪や結納がなかったとしても、結婚式場や新居を契約し、双方の家族にも結婚予定を伝えていたなど、複数の事情があれば婚約成立が認められる可能性があります。
婚約が成立しているとは言いにくいケース
次のようなケースでは、法律上の婚約が成立していたと認められにくい可能性があります。
将来について漠然と話していただけである
一方だけが結婚するつもりだった
プロポーズに対して明確な返事をしていない
結婚時期や結婚後の生活について話し合っていない
両親や友人など、周囲の誰にも結婚予定を伝えていない
結婚準備を何もしていない
交際期間が極めて短い
相手が冗談やその場の雰囲気で発言したにすぎない
婚約の有無について当事者の認識が食い違う場合には、LINEやメール、結婚準備の資料などの客観的な証拠が重要になります。
3.婚約破棄で慰謝料を請求できる条件
婚約を破棄されたからといって、必ず慰謝料を請求できるわけではありません。
一般的には、次の条件を満たしているかを検討する必要があります。
(1)法律上保護される婚約が成立していた
まず、当事者間に確定的な結婚の合意があり、法律上保護される婚約が成立していたことが必要です。
婚約の成立を相手が否定している場合には、慰謝料を請求する側が、婚約成立を示す事実や証拠を提示する必要があります。
(2)婚約が破棄または解消された
次に、成立していた婚約が終了したことが必要です。
相手が明確に「結婚しない」と伝えてきた場合だけでなく、連絡を絶つ、結婚式を一方的にキャンセルする、別の人と結婚するなどの行動から、婚約が事実上破棄されたと判断されることもあります。
(3)婚約破棄に正当な理由がない
慰謝料請求において特に重要なのが、婚約を破棄したことに正当な理由があるかどうかです。
婚約者の浮気や暴力などが原因で婚約を解消した場合には、婚約を解消する正当な理由があると判断される可能性があります。
一方で、単に気持ちが冷めた、親に反対された、ほかに好きな人ができたといった理由だけでは、正当な理由が認められない可能性があります。
(4)精神的または経済的な損害が生じた
婚約破棄によって精神的苦痛を受けた場合には、慰謝料請求を検討できます。
また、結婚式場のキャンセル料、新居の契約費用、新婚旅行のキャンセル料など、結婚準備のために具体的な支出をしていた場合には、財産的損害として請求できる可能性があります。
婚約の成立、正当な理由のない破棄、損害の発生などが認められる場合には、債務不履行や不法行為を理由とした損害賠償請求が問題となります。
4.婚約破棄の正当な理由が認められるケース
相手に婚約を破棄された場合でも、破棄したことに正当な理由があれば、慰謝料を請求できない可能性があります。
正当な理由が認められる可能性がある代表例は、次のとおりです。
(1)婚約者が浮気をした
婚約後に、婚約者が別の相手と性的関係を持った場合には、婚約を解消する正当な理由となる可能性があります。
浮気をした側が、相手から婚約を解消されたとして慰謝料を請求することは、一般的には難しいでしょう。
反対に、浮気をされた側から婚約を解消した場合には、浮気をした婚約者に対して慰謝料を請求できる可能性があります。
(2)暴力や重大なモラハラがあった
婚約者から暴力を受けた場合や、継続的な暴言、脅迫、過度な束縛などがあった場合には、婚約を解消する正当な理由になる可能性があります。
殴る、蹴るなどの身体的暴力だけでなく、人格を否定する発言、家族への重大な侮辱、行動や交友関係を過度に制限する行為なども、内容や程度によっては考慮されます。
(3)重要な事実について重大な嘘をつかれていた
結婚生活を判断するうえで重要な事実を意図的に隠されていた場合には、婚約解消の正当な理由となる可能性があります。
たとえば、次のような事情です。
実は既婚者だった
氏名や年齢を大きく偽っていた
多額の借金を意図的に隠していた
職業や収入について重大な嘘をついていた
犯罪歴など、結婚生活に重大な影響を及ぼす事情を隠していた
子どもがいることを意図的に隠していた
もっとも、どのような事情であれば正当な理由になるかは、その事実の内容、隠していた経緯、結婚生活への影響などによって異なります。
(4)婚約者が行方不明になった
婚約者が何の説明もなく突然連絡を絶ち、所在も分からなくなった場合には、婚約を解消する正当な理由が認められる可能性があります。
(5)婚約者に結婚生活を継続できない重大な問題がある
浪費、ギャンブル、依存症、働く意思がないことなどによって、結婚生活を営むことが著しく困難である場合には、事情によって婚約解消の正当な理由となる可能性があります。
ただし、単なる価値観の違いや、一時的な問題だけでは正当な理由と認められない場合もあります。
婚約破棄に正当な理由があるかは、個別の事情を総合的に判断する必要があります。
5.正当な理由が認められにくいケース
次のような理由だけで一方的に婚約を破棄した場合には、正当な理由が認められず、慰謝料の支払い義務が生じる可能性があります。
(1)気持ちが冷めた
「好きではなくなった」「結婚する気がなくなった」という理由は、本人にとっては重大な理由であっても、婚約を一方的に破棄する法的な正当理由としては認められにくい傾向があります。
結婚自体を強制されることはありませんが、正当な理由なく婚約を破棄した責任として、慰謝料などの支払いが問題となります。
(2)ほかに好きな人ができた
婚約後に別の人を好きになり、婚約者と別れた場合には、婚約破棄に正当な理由があるとは認められにくいでしょう。
別の人と浮気をしていた場合には、悪質性が高いとして慰謝料が増額される方向の事情になる可能性もあります。
(3)親に反対された
本人同士が婚約した後に、両親から反対されたという事情だけでは、通常、婚約破棄の正当な理由としては認められにくいと考えられます。
親の意見を尊重するかどうかは本人の判断ですが、親の反対を理由に相手へ一方的な不利益を負わせた場合には、損害賠償責任が生じる可能性があります。
(4)容姿や年齢に不満がある
婚約後に、相手の容姿や年齢が気になったという理由だけで婚約を破棄した場合には、正当な理由は認められにくいでしょう。
(5)占いや縁起が悪いといわれた
年回り、方角、占い、相性などを理由に婚約を破棄した場合にも、通常は正当な理由があるとは認められにくいと考えられます。
(6)性格や価値観が合わない
性格の不一致や価値観の違いは、程度によって判断が分かれます。
結婚生活が困難になるほど重大な問題が婚約後に判明した場合には、正当な理由となる可能性があります。
一方、交際中から把握していた性格の違いや、漠然とした不安だけを理由に婚約を破棄した場合には、正当な理由が認められない可能性があります。
6.自分から婚約解消を申し出た場合も請求できるのか
慰謝料を請求できるかどうかは、どちらが先に婚約解消を申し出たかだけで決まるものではありません。
自分から婚約解消を申し出た場合でも、その原因が相手の浮気、暴力、重大な嘘などにある場合には、相手に対して慰謝料を請求できる可能性があります。
たとえば、婚約者の浮気が発覚したため、浮気をされた側から「結婚できない」と伝えたケースです。
形式的には浮気をされた側から婚約解消を申し出ていますが、婚約が終了した実質的な原因は相手の浮気にあります。そのため、浮気をした婚約者に損害賠償責任が認められる可能性があります。
重要なのは、婚約解消を最初に口にした人ではなく、婚約が終了した原因を作ったのが誰かという点です。
7.婚約破棄の慰謝料の相場
婚約破棄の慰謝料額について、法律で一律の金額が決められているわけではありません。
一般的には、50万円から200万円程度が一つの目安とされることがありますが、実際の金額は個別の事情によって大きく異なります。事情によっては、この範囲を下回ることも、上回ることもあります。
慰謝料が高くなる可能性がある事情
次のような事情がある場合には、精神的苦痛が大きいとして、慰謝料が高くなる方向に考慮される可能性があります。
交際期間や婚約期間が長い
結婚式の直前に婚約を破棄された
既に結婚式の招待状を発送していた
両親、親族、友人、勤務先などへ結婚予定を伝えていた
婚約破棄をした側が浮気していた
別の相手との結婚を理由に婚約を破棄された
妊娠、中絶または出産を伴っている
結婚を理由に退職、休職または転居していた
婚約破棄後の相手の対応が不誠実だった
婚約破棄によって精神的な不調が生じ、通院した
婚約破棄の理由について重大な嘘をつかれた
過去の裁判例でも、長期間の交際や婚約、結婚準備の進行、妊娠・中絶、婚約解消後の不誠実な対応などを考慮し、比較的高額な慰謝料が認められたケースがあります。
慰謝料が低くなる可能性がある事情
反対に、次のような場合には、慰謝料が低額となったり、慰謝料請求自体が認められなかったりする可能性があります。
婚約期間が短い
結婚準備をほとんどしていない
婚約成立を示す証拠が乏しい
婚約破棄について双方に責任がある
請求する側にも浮気や暴力などの問題があった
当事者双方が事実上婚約解消に同意していた
婚約破棄による具体的な損害が小さい
請求する際には、感情的に金額を決めるのではなく、裁判になった場合にどの程度認められる可能性があるかを踏まえて、適切な請求額を検討する必要があります。
8.婚約破棄で集めておきたい証拠
婚約破棄の慰謝料を請求する場合、婚約の成立、破棄の経緯、相手の責任、損害額などを証拠で示す必要があります。相手に連絡する前に、次のような資料を保存しておきましょう。
(1)婚約が成立していたことを示す証拠
プロポーズや結婚の約束に関するLINE、メール
婚約指輪や結婚指輪
指輪の領収書や保証書
結納品や結納金に関する資料
両家の顔合わせを行った際の写真
結婚式場の申込書や契約書
結婚式の招待状
新婚旅行の予約確認書
新居の賃貸借契約書
結婚予定を勤務先へ報告したメール
家族、友人、同僚などの証言
LINEやメールは、一部分だけでは前後の文脈が分からないことがあります。相手のアカウント名や送信日時、前後のやり取りが分かる形で保存しましょう。
(2)婚約を破棄されたことを示す証拠
婚約破棄を伝えられたLINEやメール
相手との会話を録音したデータ
結婚式や新居を一方的にキャンセルされた記録
相手が別の人と結婚したことを示す資料
婚約破棄の理由が記載された手紙や文書
口頭で婚約破棄を伝えられた場合には、日時、場所、言われた内容をできるだけ早く記録しておくことも大切です。
(3)相手に責任があることを示す証拠
浮気相手とのLINEやメール
浮気相手と一緒にいる写真や動画
ホテルを利用した記録
暴力によるけがの写真
医療機関の診断書
暴言や脅迫の録音
重大な嘘をついていたことが分かる資料
警察や相談機関への相談記録
証拠を集める際には、不正アクセス、住居侵入、無断での位置情報取得など、違法となる可能性がある方法を使わないよう注意が必要です。
(4)損害額を示す証拠
結婚式場の契約書や領収書
キャンセル料の請求書
新婚旅行の予約明細
新居の契約書
家具や家電の領収書
引っ越し費用の領収書
退職届や休職に関する資料
給与明細や源泉徴収票
医療費の領収書
精神的な不調に関する診断書
どの資料が証拠として役立つか分からない場合でも、自己判断で処分せず、弁護士へ相談する際に持参することをおすすめします。
9.婚約破棄で慰謝料を請求する流れ
(1)婚約成立から破棄までの経緯を整理する
まずは、交際開始から婚約、結婚準備、婚約破棄までの経緯を時系列で整理します。
次の事項をまとめておくと、問題点を把握しやすくなります。
交際を開始した時期
プロポーズをした日時と場所
結婚について話し合った内容
両親への挨拶や顔合わせの日
結婚式、新婚旅行、新居の準備状況
婚約破棄を伝えられた日時
相手が説明した婚約破棄の理由
婚約破棄によって生じた費用
(2)証拠を保存する
LINE、メール、写真、契約書、領収書などを保存します。
相手へ慰謝料請求をすると、メッセージやSNSの投稿を削除される可能性があります。請求前に必要な証拠を確保しておくことが重要です。
(3)請求する金額を検討する
精神的苦痛に対する慰謝料と、結婚準備費用などの財産的損害を分けて整理します。
結婚式場のキャンセル料などは、請求書や領収書に基づいて具体的な金額を計算します。
慰謝料については、婚約期間、破棄の理由、相手の悪質性などを踏まえて金額を検討します。
(4)相手と交渉する
相手に対して、婚約破棄によって生じた損害の支払いを求めます。
口頭、電話、メールなどで請求することもできますが、請求内容を明確にし、記録に残すため、内容証明郵便を利用することがあります。
内容証明郵便には、主に次の内容を記載します。
婚約が成立していたこと
婚約が破棄された経緯
婚約破棄に正当な理由がないこと
請求する慰謝料や損害額
支払期限
振込先
支払いがない場合の対応
感情的な表現や脅迫的な記載をすると、交渉が難しくなるだけでなく、別のトラブルにつながる可能性があります。
(5)合意書を作成する
慰謝料額や支払い方法について合意できた場合には、口約束で終わらせず、合意書または示談書を作成しましょう。
合意書には、次の事項を記載します。
支払う金額
支払期限
一括払いか分割払いか
振込先
遅延した場合の取扱い
結婚準備品や婚約指輪の取扱い
双方の連絡や接触に関する事項
守秘義務
清算条項
分割払いの場合には、途中で支払いが止まる可能性があります。状況によっては、強制執行認諾文言を付けた公正証書を作成することも検討します。
(6)家庭裁判所の調停を利用する
当事者間で話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所の調停手続を利用できる場合があります。
調停では、調停委員が双方から婚約解消の経緯や原因を確認し、解決案を提示するなどして、話し合いによる解決を目指します。
(7)裁判を起こす
交渉や調停でも解決できない場合には、損害賠償請求訴訟を検討します。
裁判では、主に次の点が争われます。
婚約が成立していたか
婚約を破棄したのは誰か
婚約破棄に正当な理由があったか
婚約破棄の原因はどちらにあるか
どのような損害が生じたか
請求額が適切か
裁判では証拠に基づく主張が必要となるため、提訴前に証拠や請求内容を十分に整理する必要があります。
10.婚約破棄の慰謝料請求には時効がある
婚約破棄による損害賠償請求には、消滅時効があります。
婚約破棄の慰謝料請求は、事案によって債務不履行または不法行為として整理される可能性があり、どの法律構成をとるかによって時効期間や起算点の考え方が異なることがあります。
不法行為に基づく請求の場合には、損害と加害者を知った時から3年間で時効により消滅します(民法724条1号)。また、不法行為の時から20年が経過した場合にも、時効により請求できなくなります(同条2号)。一方、債務不履行に基づく請求では、権利を行使できることを知った時から5年間、または権利を行使できる時から10年間で時効により消滅します(民法166条1項)。
どの時点から時効が進行するかについて判断が難しいケースもあります。
婚約破棄から時間が経過している場合には、「まだ請求できるだろう」と自己判断せず、早めに弁護士へ相談することが重要です。
11.婚約破棄について弁護士へ相談するメリット
(1)婚約が成立していたか判断できる
婚約破棄の問題では、そもそも法律上の婚約が成立していたかが争われることが少なくありません。
弁護士へ相談すれば、プロポーズの内容、両親への挨拶、結婚準備の状況、LINEなどの証拠を確認し、婚約成立が認められる可能性を検討できます。
(2)婚約破棄に正当な理由があるか判断できる
婚約を破棄した理由が正当なものかどうかは、当事者自身では判断が難しいことがあります。
相手の浮気、暴力、借金、重大な嘘などについて、裁判になった場合にどのように評価されるかを踏まえたアドバイスを受けられます。
(3)適切な慰謝料や損害額を計算できる
婚約破棄によって請求できるのは、精神的苦痛に対する慰謝料だけではありません。
結婚式、新婚旅行、新居、退職などに伴う損害も含め、どの費用をどこまで請求できる可能性があるかを整理できます。
(4)相手との交渉を任せられる
婚約破棄後は、感情的な対立が激しくなり、当事者同士で冷静に話し合うことが難しくなる場合があります。
弁護士へ依頼すれば、相手への連絡や慰謝料交渉の窓口を任せることができます。
相手と直接やり取りする精神的な負担も軽減できます。
(5)示談書や公正証書を作成できる
慰謝料の支払いについて合意できても、合意書の内容が不十分であれば、支払いが遅れたり、後から追加請求を受けたりする可能性があります。
弁護士へ依頼すれば、支払期限、分割払い、遅延時の対応、清算条項などを盛り込んだ示談書を作成できます。
12.まとめ
法律上保護される婚約が成立していたにもかかわらず、相手から正当な理由なく婚約を破棄された場合には、慰謝料や結婚準備費用を請求できる可能性があります。
婚約破棄で慰謝料を請求するためには、主に次の点が重要です。
法律上の婚約が成立していたこと
婚約が破棄または解消されたこと
婚約破棄に正当な理由がないこと
婚約破棄によって精神的・経済的損害が生じたこと
婚約成立や損害を示す証拠があること
婚約は口約束でも成立する可能性がありますが、相手が婚約の事実を否定した場合には、LINE、婚約指輪、両家の顔合わせ、結婚式場の契約書などの証拠が重要になります。
また、婚約破棄をされた側だけでなく、自分から婚約解消を申し出た場合でも、相手の浮気や暴力が原因であれば慰謝料を請求できる可能性があります。
一方、婚約を解消した側も、婚約が成立していない場合や、解消に正当な理由がある場合には、慰謝料の支払い義務を否定できることがあります。
弁護士法人アイリスは、枚方・茨木を中心に、離婚、不倫慰謝料、婚約破棄などの男女問題に関するご相談をお受けしています。
「突然婚約を破棄され、慰謝料を請求したい」
「結婚式や新居のキャンセル費用を請求したい」
「相手が婚約していなかったと主張している」
「婚約破棄を理由に高額な慰謝料を請求されている」
このようなお悩みをお持ちの方は、一人で抱え込まず、弁護士法人アイリスまでご相談ください。
交際や婚約の経緯、お手元の証拠、結婚準備に要した費用などを確認し、今後どのように対応すべきかを一緒に検討いたします。
